アトリエ通信 2023年6月号

5月は、忙しい月でした。あれよあれよという間に、5月11日に行われたArt and Olfaction Awards の授賞式(@LA)に行くことになったり、石垣島に戻るや否や、ロート製薬の香りラボ「べレアラボ」のメンバーが遊びにくることになったり。

べレアラボのチーフ・パフューマーは、クリストフ・ラウダミエル Christophe Laudamiel という人物です。彼も上記アワードの常連入賞者のため、毎年毎年顔を合わせており、さすがにお互いの存在は知っています。ただ、どちらも恥ずかしがり屋な方なので、あまり話したことはありませんでした。GW中に来日した彼が「精子の匂いがする」と投稿したのに私が反応し、それががきっかけで(結局、どの木の花粉かはわからなかったけど)親しくなり始めました。

ネットで調べると自明ですが、とにかく著名な方。独立系調香師といって、Zooという自分のブランドを持っており、他のどこのブランドにも属さない調香師(べレアラボは例外)。彼の作る香りの素晴らしさは、毎年のアワードで嗅いで知っていたのですが、彼をリスペクトする理由は他にあります。調香界の問題点を忌憚なく指摘し、現状を変えようと声高に唱えるそのアナーキーな姿勢は、まるでアーティストそのものです。大手の香料会社からも一目置かれる存在。

興味ある方は、The Perfumery Code of Ethics というサイトを見てみてください。彼が倫理規定を提案し、多くの賛同を集めています。テキストの細部から、彼の真面目で真っ直ぐで、フェアで紳士的な人柄がうかがえることでしょう。また、noteでも当アカデミー卒業生の楠尚子さんが彼について書いています。香りの教育の重要性などを訴えた”a fragrance manifesto by master perfumer Christophe Laudamiel” というPDFも有名。私もこれに感化されたところはあると思います。こんな方が日本に片足突っ込んでくれているなんて、なんてラッキーなの、日本の香りの未来。

前置きが長くなりましたが、石垣島では彼のイメージでもあるシャープなカリスマ性をまったく感じさせず、子どものようになんでも香りをむさぼり、口にし、分析し続けるチャーミングな姿が印象的でした。