香りのお便り 2023年11月10日号

*|MC:SUBJECT|*
このニュースレターは、嗅覚芸術家・上田麻希 (MAKI UEDA合同会社代表)とお名刺交換させていただいた方、および石垣島の香りのアトリエPEPE、そして香りソムリエアカデミーにご縁をいただいた方に、不定期でお送りします。
秋のアートイベントや展示のご案内

現在展示中のものから、これからのイベント、もう終わってしまったものまで、一気にご紹介します。

このようなニュースレターを出すのは約10年ぶり。最近は国内、特に東京や京都での嗅覚アート展示の機会をたくさんいただいています。せっかくなのでみなさまにお知らせしたく思いました。芸術の秋真っ盛りですね。

[まもなく終了]
香りのアート展
「にほひ/丹秀ひ」

クリストフ・ロダミエル X 上田麻希
produced by BELAIR LAB

  • 2023年10月20日(金)-11月15日(水)
  • 12:00~20:30
  • 場所:SUPERNOVA 川崎4F「SPACE」〒212-0014 神奈川県川崎市幸区大宮町1-13
  • JR川崎駅から屋根付きペデストリアンデッキを経由し直結しており、徒歩約3分です。こちらをご覧ください。

世界を舞台に活躍する調香師クリストフ・ロダミエルの香りを、嗅覚芸術家・上田麻希が視覚化した、夢のコラボレーション作品です。

床一面に敷きつめられた折り紙の花が、アロマディフューザーのように匂いを吸い上げ、放ちます。匂いの成分ごとに対応した色が、匂いを視覚化しています。物質を成分ごとに分離する「クロマトグラフィー」という分析技法を応用しています。

もともと「におい」は、共感覚的なことばでした。古語の「にほひ(丹秀ひ)」は、赤やピンク、 朱色の、ふわっとした視覚的な神々しさを指します。「丹」は赤い水銀の原鉱石で朱砂とも呼ば れ、神社の鳥居の塗装に使われました。この作品は、現代に生きるわたしたちに、いにしえの共感覚を問いかけます。

会場名「SUPERNOVA」は、超新星を意味します。超新星の美しい色どりもまた、大気のクロマ トグラフィーを視覚化したものです。これらの小さな花ひとつひとつが、新しい星(スター)の 誕生、SUPERNOVAを表しています。


べレアラボによるインタビュー
PR TIMES で公開されている情報

実際、わたし自身もうっとりするような、ボーッと座り込んでしまう空間です。お誘い合わせの上、ぜひお越しくださいませ。

11月23日
「におう」

【柳井イニシアティブ】レコードプロジェクト 『におう when we were together inhaling the same scent』
2023年11月23日 16:00-18:00。早稲田大学にて、無料(登録の後、抽選制。)

小説家・漫画家の小林エリカさんとの対談です。エリカさんは、放射能という見えないものを描く作家です。彼女による朗読と、私の持参する匂いが醸し出す、ふしぎな「空気感」が、そのままレコードに波形として刻まれ、アーカイブされるという挑戦的な企てです。

お申し込みは、こちらから。
日本語のページ>>
ENGLISH PAGE>>
 

12月7日〜9日
量子芸術祭

量子芸術祭にて展示予定です。2023年12月7日〜9日、東京にて。*詳細はまだ発表されていません。

過去作より OLFACTOSCAPE をアレンジして展示予定。2007年に「シャネル5番」をモチーフに、円筒の中を歩いて個別の匂いとその混合臭をみずから動いて嗅ぐために作られた作品です。

東京大学の東原和成先生と、量子と匂いに関するトークも予定しております。現地ORオンラインでご参加いただける予定。
公式サイト >>

当社の事業

今回のニュースレターでは、嗅覚芸術家としてのお知らせが盛りだくさんでしたが(芸術の秋なので)、法人としては以下さまざまな事業を展開しています。お時間のあるときに、ご覧ください。
嗅覚教育
嗅覚ツーリズム
香り事業コンサル
香りでSDG’s [SCENT FOR THOUGHT] ブランドの展開


また、嗅覚芸術の作家としての活動はもうすぐ20年経ちます。過去の作品については、こちらのウェブサイトをご覧ください。
MAKI UEDA

[終了]
東京ビエンナーレ2023

藤幡正樹率いる「超分別ゴミ箱2023プロジェクト」に参加し、プラスチックに関する作品を作りました私たちの日常生活と切り離せない「ゴミ」。特にその分別と再使用・再生利用の重要性が高いプラスチックのゴミについて知り、考えるプロジェクトです。

  • 参加アーティスト:安西 剛、上田麻希、生形三郎、ブルース・オズボーン
  • プロジェクトメンバー:藤幡正樹、乾義和、長峰宏治、東京都立工芸高等学校、その他参加者、自治体、企業、各種団体等
  • 展示期間: 2023年9月23日〜11月5日
  • 公式サイト>>

「あのプラスチック、おいしそう」〜コマンドとしての匂い〜


[作品によせて]

海鳥やウミガメ、魚などの海の生き物が、なぜ海に浮かぶプラスチックを誤って食べてしまうか、ご存知ですか。

実は、匂いが関係しているんです。

その犯人、情報化学物質DMSを、人間が快適に嗅ぐための、装置としての作品です。ボウルの淵から匂いを嗅ぎ、なぜ彼らがプラスチックを食べずにはいられないかを、ここで考えてみましょう。

プラスチックは、とても匂いを吸着しやすい素材です。海を長く漂ううちに、プランクトンが発するDMS(ジメチルスルフィド)という匂いを吸着します。

DMSは海の生物たちにとっては、「豊富なプランクトン=エサ場」を意味します。こうして「エサもどき」となったプラスチックを、視覚が弱い海の生き物達は、間違えて食べてしまうのです。

これを知った時、私も驚き、いくつかのことを考えました。

まず、それならプラスチックを、匂いを吸着しないような構造にできないか。あるいは炭などで匂いを帳消しにできないか。他の匂いでマスキングできないか。そうすれば、誤食の問題は、根本的に解決するかもしれないですよね。

そして、どれだけ私たちは、問題を鵜呑みにして生きているのか。なぜ問題となるのかをちゃんと知らずに、やみくもにプラスチックの使用を減らそうとしているわけですね。

さらに、どれだけ私たちは、視覚で物事を考えるのか。特に自然界では匂いが情報として優位に働いているにも関わらず、つい自分たちの視覚優位な感覚を海の生物に当てはめてしまう。

亀がビニール袋を食べたり、海鳥の腸がプラスチックで詰まったりして、死んでしまう — その衝撃的な映像が広まったことにより、プラスチックの使用が問題視され始めましたが、これもやはり視覚的なインパクトによるものでした。皮肉なものですね。

この作品は、マイクロプラスチック問題を仲介する情報化学物質DMSを、人間が快適に嗅ぐための装置です。ぜひみなさんも、海鳥や亀になった気持ちで、匂いを体験してください。

[終了]
京都エキスペリメント2023

メディア・アーティスト山内祥太さんとのコラボレーション作品を発表しました。「におう」という言葉はもともと古語で、神々しく輝くものに対する共感覚的な表現でしたが、それを五感で体験するための、贅沢な時空間でした。

観客の皆様には体臭を持ってきてもらい、匂いを抽出する蒸留のプロセスが時間軸の中心となりました。わたしはさまざまに「匂いの道具」を提供。山内さんと3人のパフォーマーは、それをオモチャのように使いこなし、空間をめいっぱい使い、存分に遊んでくれました。

 
  • 作品タイトル:『汗と油のチーズのように酸っぱいジュース』
  • 公演期間: 2023年10月7日〜9日
  • 構成・演出: 山内祥太、マキ・ウエダ
  • 出演: 小倉笑、藤田彩佳、三好彼流
  • 振付アドバイス: 捩子ぴじん
  • 音楽: 小松千倫
  • “匂いが好きの歌” “臭いの歌” 作詞:山内祥太
  • “匂いが好きの歌” ”臭いの歌” 作曲:小倉笑
  • 衣装協力:ENFÖLD、Kurage
  • 舞台監督 :北方こだち
  • 照明:渡辺佳奈
  • 音響:林実菜
  • 映像システム:横田宇雄
  • 字幕翻訳:hanare x Social Kitchen Translation
  • 制作:武田侑子、
  • 奥山愛菜/木元太郎(THEATRE E9 KYOTO)
  • 短期インターン:角岡玲緒、森雅稀、山本翔太
  • 写真撮影:守屋友樹  提供:KYOTO EXPERIMENT
  • 公式サイト>>

[作品によせて]

飛行機の中。電車の中。劇場の中。人でいっぱいの場所は、人の匂いでいっぱいです。でもよほどでない限り、匂いはしませんよね。きょうはこの作品を通して、このことについて、みなさんと試行錯誤できたらいいなと思っています。

わたしはふだんから匂いをメディウムとして作品を作っており、過去に体臭をテーマとした作品をいくつか作っています。昔の東ドイツ秘密警察シュタージが、容疑者の体臭を指紋のようにコレクションしていたのは有名ですが、これについての作品も作りました。嗅覚アート界でも「体臭」は、永遠のテーマと言っても過言ではありません。

実は、自分の匂いほど、嗅ぐのが難しい匂いは他にありません。というのも、嗅覚がもはや全く意識していない、つまり慢性的な嗅覚疲労を起こしている匂いだからです。また、人間は雑食なので、種としては相当臭いと言われていますが、私たちにはその判断がつきません。同じ種だからです。私たちは動物たちを「臭い」と思っていますが、実は動物たちも人間のことを「臭い」と思っているのかもしれません。

ところで、現代アートの礎を築いた哲学者カントによれば、嗅覚・味覚・触覚は、視覚・聴覚と違って対象との距離が取れないため「批判的判断(クリティカル・ジャッジメント)」ができず、それゆえアートの対象にはなり得ない感覚とのことです。先に挙げた「自分の匂い」の例もあり、反論できませんね。

確かに、匂いのアートは、難しいのです。匂い香りはもともと、客寄せ的な話題性や、お客様サービス的なアミューズ、癒し効果やムード作りが期待されがち。記憶と結びつけた情緒的な部分も強調され、ともすればディズニーランドのエンターテイメントになってしまいがち。どうすれば現代アートというコンテキストで意味あるものになるのでしょうか。

そこで、カントの指摘をスターティングポイントとしてみようと考えました。嗅げないはずの人の匂いを素材として、その試行錯誤を観客と共有する、これが制作コンセプトとなりました。そして山内さんの希望により、シナリオに沿ったいくつかの香りを出すパートも作りました。

嗅覚の特性上、いつも嗅いでいるものは嗅げない。そのため、自分の体臭ほど、嗅げないものはない。嗅覚疲労は数分でも起こる。これを知っているだけに、じぶんの汗が臭いと感じられる瞬間、本当はどれだけ臭いのだろうと、じぶんの鼻と判断が頼りにならないことに空恐ろしくなる昨今です。
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