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11/15(土)嗅覚シンポジウム

機会があればずっとやりたいと思っていた、嗅覚アートのシンポジウム。今回、CCBTにて場をいただき、「コモンズとしての空気」というテーマの元、3名のすばらしい先生たちをお呼びする企画となりました。純粋な嗅覚アートのシンポジウムではないですが、アートが異なる領域をつなぐ役割を担います。

このシンポジウムでは、「匂い」という一見目に見えない感覚が、どのように意味を持ち、社会や文化に作用するのかを考えます。

– 美学の視点からは、芸術における嗅覚表現の歴史的背景や、「匂いの美学」の可能性が語られます。

– 化学の視点からは、人間や動物の嗅覚メカニズムが紹介され、人類にとっての匂いの意味を問います。

– デジタルの視点からは、空気や匂いをリアルタイムかつモバイルで記録する技術やその応用例が共有され、未来を展望する材料を提供します。また、リコー社FAIMSによるライブ計測デモでは「東京の満員電車」を参加者の皆さんで再現し、このような状況下の嗅覚を考察します。

Take away:

– 参加者は、このシンポジウムを通じて、匂いを単なる癒しや刺激としてではなく、美学・科学・テクノロジーの交差点に立ち現れる「新たな知」として捉える視座を得ることができます。

– また、嗅覚をめぐる最新の研究成果や実践事例に触れることで、空気や匂いを「コモンズ=共有資源」として考えるヒントを持ち帰ることができるでしょう。

Symposium on Olfactory Art: “When Smell Has Meaning”

I’ve long wanted to organize a symposium on olfactory art—and now, thanks to the opportunity provided by CCBT, this wish has come true. Tying in with the annual theme “Air as Commons,” this event brings together three outstanding speakers from different disciplines.

While it is not a purely olfactory art symposium, art here plays the crucial role of connecting diverse fields and perspectives.

This symposium explores how smell—a seemingly invisible sense—acquires meaning and influences society and culture.

(Language: Japanese)

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温室効果ガス(GHG)の調香

ふつうはフレグランス(パフューム、香水ともいう)を作るために使う調香スキル。これをもってアートの場で、社会に一石を投ずることができないか、考えています。

もしコモンズ(共有財産・資源)として空気と匂いを考えるのであれば、さまざまなフォーカスポイントが考えられます。たとえばミクロに見ると、満員電車で大勢の人と共有している空気と匂い。もっとミクロに見ると、家で、あるいはオフィスで、隣の人と共有している空気と匂い。

でもマクロに見ると、空気、そして地球をとりまく大気は、地球上の生物がみんなで共有しているものといえます。あまりに大きすぎて、個々の生物は知覚できないようなスケールです。匂いや空気に境界線はなく、自由に動き回る(対流する)性質があります。

昨今の東京は暑いです。明らかに気候が変わりつつあることは、誰もが感じています。気候変動が起きている原因は、二酸化炭素(CO₂)、メタン(CH₄)、一酸化二窒素(N₂O)などの温室効果ガス(GHG)といわれます。これもコモンズとして空気や大気を見た時に、人類が共有すべき問題であり課題であります。

実際のところ、これらの温室効果ガスは人間の活動とどう関係しているのでしょうか? 私たちに何ができるのでしょうか? そういったことを学んだり考えたりする材料として、調香スキルを使って匂いを作ってみるのであれば、未来の社会にとって意義のあることなのではないか。そう考えいます。

昨年、スペインのアーティスト Yolanda Uriz の要請で、NO2(二酸化窒素)とO3(オゾン)の調香ワークショップをオンラインでやりましたので、その時の写真をご紹介します。彼女はわたしがオランダの芸大で教えた生徒ですが、匂いを駆使するアーティストに成長しています。

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今後の予定

さまざまにお問い合わせをいただく中、オフィシャルな情報公開にはちょっと時間がかかってしまうため、ご興味持たれている方のためここで予定を共有させていただきます。

9月末:SMELL LAB メンバー募集
https://ccbt.rekibun.or.jp/events/smell-lab

10月6日: 19:00-21:00 SMELL LAB 説明会 (online)

SMELL LAB の集中勉強会やWSは主に、11月上旬〜中旬になります! 現時点の予定はこちら↓(随時更新予定)

11月15日(土)シンポジウム「匂いが意味をもつとき」
https://ccbt.rekibun.or.jp/events/when-smell-has-meaning

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匂いのマップ – Scentscape of Tokyo –

今後制作を考えているもののひとつに、匂いのダイナミック・マップ作りがあります。

(↑朱色のマーカーが試しに私が書き込んでみたもの)

天候にもよりますが、渋谷には下水の匂いが充満していることが多いです。それはこの街の名の通り、谷にはさまざまに川が流れ込むからではないかと考えられます。

ですが今の渋谷は国際色豊かで、道を歩くと外国人観光客のまとう香水の香りや、インドネシアのタバコ・ガラムの匂いが漂ったりもしています。飲食店の匂いも彩り豊かです。

おそらく100-200年前までの渋谷には、春はたんぽぽ、秋は柿の葉といったような、田舎っぽい自然な匂いが漂っていたことでしょう。しかし今や渋谷は、世界的でいちばん人通りの多いハチ公交差点を有し、大都市の代名詞のようでもあります。人類は、自然の匂いを排除することによって、都市を作り上げてきました。いわば都市は、人類の縄張りです。しかも人類がこのような匂い環境に晒されてから100年ほどしか経ってないにも関わらず、この環境に適応できているのは、すごいことかもしれません。あるいは適応できているとはいえないのかもしれません。

参考:都市と匂いについてのエッセイ1「人を死に追いやる匂い」
参考:都市と匂いについてのエッセイ2 「原油の匂い〜天然と合成のあいだ〜」

匂いは、消えゆくはかないものであるがゆえ、その時、その瞬間に嗅いだものを逃さず、マップに記入していきます。しかも嗅覚は個人的な体験ゆえ、個々人がスマホからその瞬間に Google Map に記入できるのが理想です。

マップ作りは、活動初期の2009年から

これまで上田はワークショップとして身近な匂いをハンティングするスメル・ウォークを開催し、Google Map を使ってさまざまな匂いマップを作ってきました。

こちらは記憶の限り、私が公共の場でアートとして行った、初めてのスメル・ウォークかな? 2009年夏、オランダ・ライデンで開催。匂いの元となるものを写真に撮って、マッピングしました。
https://ueda.nl/english-uk/workshops/walk-n-sniff/walk-n-sniff/

map_walknsniff

オランダのデザインウィーク2010では、スメル・ウォークとともに、抽出のWSとその成果展示を行いました。匂いを抽出したものを使って、アイントホーフェンの街を知らない人向けに、簡単なゲーム(チャート)をメンバーとともに遊びながら考えました。

こちらは2010年大阪編↓。考えてみたら現在でも残っている最古のダイナミックなマップです。まだスマホが一般的ではない時代でしたので、参加者それぞれPCからGoogle Mapに書き込んでもらい、デジタル上の「パブリック・モニュメント」を目指しました。現状のものを埋め込みます↓

デジタルをアナログに落としこみ、展示はこのようになりました。

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参加者を招待して、自分のアカウントから自由に書き込んでもらった初めての試みでしたが、なにしろ15年も前。ダイナミックマップ上はだいぶ匂いのスポットが抜け落ちてるのを見ると、当時のアカウントをいまだに維持している人は少ないようですね。ぜんぜんパブリック・モニュメントになってない(笑)。パブリックが作るダイナミック・マップの課題といえそうです。

シンガポールでは、Fringe Festival の一環で、シンガポール国立美術館にて抽出ワークショップと成果展示。詳細はこちら。ダイナミック・マップは使いませんでしたが(笑)個人的には作ってまだ保持しています。

DSCN0084

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教育現場では最初に取り入れたのは、記憶が正しければ2009年5月、オランダ・ロッテルダムの美術大学 Willem de Kooning Academy にて。Google マップと、香りの抽出を組み合わせました。

このように、私の活動初期(2010年あたりまで)より世界中でこのメソッドを展開してきました。大阪から15年、日本ではまだ他にありません。

現在も個人的に細々と続けている匂いのマップ作り

10年以上拠点としている石垣島にて、四季折々の匂いを逃さずマップに記述しています。常夏な石垣島にも、いちおう四季は存在します。観光で来られた方に、その時どこに行けばどんな熱帯の花の香りが嗅げるか、ガイドブックがわりに使ってもらえればと制作しました。(こちらは現在有料配布中のため公開していません。)
https://pepe.okinawa/?product=%E7%9F%B3%E5%9E%A3%E5%B3%B6%E3%81%AE%E9%A6%99%E3%82%8A%E3%83%9E%E3%83%83%E3%83%97%EF%BC%88google-map%EF%BC%89

↑表示されているのは石垣島の春、1〜3月、の匂いのレイヤー。四季ごとに別のレイヤーに分けて表示している。

街中の匂いを嗅ぎ回るスメル・ウォークは、始めた当時は珍しいものでしたが、簡単に身近なところでできるものですから、世界的に見るともうたいして珍しいものではないと思います。ですが、抽出から展示まで含めた一連のワークショップメソッドを MAKI’S METHOD としています。

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Olfacto-Politics (嗅覚の力学)

The Air as a Medium (メディウムとしての空気)

2025年8月より、CCBTアーティストフェローとして活動が始まりました。このブログを私の思考や発見を記していくメモがわりの場にしようと思います。まずは、私の実施計画書より重要なコンセプト部分をご紹介します。

Olfacto-Politics (嗅覚の力学)

生きることは、空気を分かち合うこと。
見えないけど感じられる匂いは
そこにある私たちの関係を問い直す。

To live is to share the air.
We do not see it, but we breathe it.
Smell connects us ̶ and reveals our relationships.

本企画は、都市における空気の存在をコモンズ(共有資源)として再発見し、気候変動・都市公害・共生などの社会課題を嗅覚という非視覚的感覚を通して可視化・体験・共有するものである。嗅覚をめぐる社会的力学や権力構造などの隠れたポリティクスを暴いていく。

教育・リサーチ・表現の3つのプロジェクトを段階的に接続することで、空気という「見えないコモンズ」に対する市民の理解と行動を促し、この不確定な時代を生きる(息る)ための嗅覚的レジリエンスを養う場となることを目指す。


ARTIST STATEMENT

空気はコモンズ(共有資源)である。息を吸って吐いて生きる私たちにとって、ここまでは私ので、そこからはあなたのね、と線引きできるものではない。コロナ禍は我々にそのことを改めて認識させた。

もし空気を媒体(メディウム)と捉えるなら、我々人間含むすべての生物がそこでたくさんの情報をやりとりしている。酸素や窒素などの気体、匂いやエアロゾルなど化合物やウィルス、さらには科学では説明しにくい「気」のようなものも内包する。このプロジェクトは匂いを手がかりに、コモンズとしての空気とその循環を可視化し、タンジブルに体験できるようにするものである。

私は嗅覚アーティストとして20年以上、匂いに携わっている。匂いや香りには、人の感情や記憶に訴えるという興味深い側面がある。しかしその点が誇張されてフォーカスされがちでもあり、香りと情緒を紐づければ、モノやサービスが売れやすくなるとも思われがちである。
 見方を変えれば、息をせねば生きられない我々にとっては、無意識に操られるということも意味する。しかも過密な都市には、良くも悪くも人工的な匂いで溢れかえっている。嗅覚を通して体内に入ってくる揮発性物質を広義の匂いと捉えるなら、それは生理現象をも操り、時に健康を害し、人を死に追いやる側面もある。

先日埼玉八潮で起きた下水陥没事故の原因も、卵の腐ったような匂い、硫化水素といわれている(金属を腐食させる)。30年前の地下鉄サリン事件で使われたサリンも、揮発性の有機リン系化合物であり、異臭がしたと被害者は語っている。世界有数の人口密度を誇る東京の過密・密閉下では、例えば階下の焼き鳥屋と上のマンション住民との間で問題なるなど、匂いは争いの火種として常に潜んでいる。そして普段はコントロール下にあるように見える場合でも、災害時や非常時には必ず悪臭が課題となる。

コモンズとして空気を捉えるなら、そこで生じる様々な問題もグローバル・コモンズである。昨今の東京の夏は危機的に暑い。気候変動、温暖化問題はもう待ったなしの切実な問題であろう。私はここで、匂いで人の記憶や感情に訴えるよりは、テクノロジー(デジタル嗅覚)の力を借りて客観的なデータを示したいと考える。

都市とは、自然からその匂いを奪ったエリア、いわば人間の縄張りである。東京のような大都市に人が生きるようになってから、せいぜい100年ほどしか経っておらず、東京はさながら壮大な嗅覚の実験場である。そんな東京を舞台に、このプロジェクトでは「生きる(息る)」ことを問い、嗅覚のレジリエンスを養う場としていきたい。